脱力トレーニング 脚から揺れを伝える

 

刑事ドラマなんかで、

犯人が逮捕されるシーン。

刑事が犯人の腕をおさえて手錠を掛けただけで、

なぜか大人しく捕まってしまう。

リビングでテレビを見てるぶんには、

「そんな簡単に動けなくなったりしないよ!」

なんて思うよね?

でも実際にはほとんどの人が、

多かれ少なかれこの犯人と同じことをしている。

 

 

客観的に見ると、

余程の実力差がない限り、

腕をおさえられても身体は動く。

にもかかわらず、

身動き取れなくなってしまう人が、

かなりの割合でいる。

それは、

刺激に対する反応が自分の全てになってしまうから。

この場合だと、

おさえられた腕=自分だと勘違いしてしまう。

そして、腕を必死に動かそうとする。

腕以外の全身を硬直させながら。

 

 

動画では、お互い四つ這いで並んで、

脚から揺れを伝えて相手を動かしている。

犬のションベンみたいなカタチだねw

ポイントは、いかに足で蹴らないでやるか。

足裏で相手と触れているため、

どうしてもそこで蹴りたくなってしまう。

でも蹴ろうとすると、

相手の方が安定したカタチなので、

逆に跳ね返されてしまう。

蹴り足以外を効果的に使うことで、

自分の体重を最大限活用できる。

 

刺激に対する反応が自分の全てになる現象は、

身体だけの問題じゃない。

思い通りにいかなくて腹が立つことや、

逆に思いもよらない嬉しいこと。

そんな心の反応も自分だけど、

それが自分の全てじゃない。

むしろ、

それ以外の今まで見えなかった所に、

大部分の自分がいる。

そんなことに気づかせてくれるのも、

脱力トレーニングのいい所だと思う。

 

 

脱力トレーニング 心と身体を分離させる

 

脱力トレーニングは、

身体のトレーニングであると同時に、

意識のトレーニングでもある。

意識の使い方で身体が変わることを、

様々なカタチで体験する。

 

 

師範の言葉に、

「心身一如とは言うけれど、

まずは心と身体を分離させることを覚える。」

というものがある。

普通は悪い意味で、

心と身体が癒着している。

心が刺激に過剰に反応して身体を緊張させる。

刺激がなくなった後も、

身体の緊張が心を固く縛ってしまう。

そこでまずは心と身体を切り離して、

リラックスした身体を取り戻すトレーニングをする。

 

 

動画では、

二人に脇の下から手を入れて、

身体を持ち上げてもらっている。

それに対して肋骨と骨盤を分離させる事で、

重心への影響を少なくして、

持ち上がりにくい身体で受け止めている。

 

肋骨と骨盤の分離は、

言い換えれば上半身と下半身の分離とも言える。

相手は脇という上半身の一部に刺激を加えるが、

自分は分離した下半身に意識を置く。

刺激と自分の意識をうまく切り離せると、

刺激に対して過剰に反応することを減らせる。

身体がリラックスして安定する感覚を、

信じられるようになってくる。

 

心は刺激に反応してても、

身体はリラックスして安定してる。

だから安心して心を身体に任せられる。

まずはそんな自分でありたい。

 

 

脱力トレーニング 重み伝達 杖

 

自分が整体・マッサージをしててなんだけど、

あまりマッサージを受けるのが好きではない。

他の人がどう感じてるかは知らないけど、

私はあのギューギュー、

ゴリゴリ押される感じが苦手だ。

緩めてもらうどころか、

逆に筋肉が硬くなってしまう。

とは言え、ただ撫でられるだけでも物足りない。

…客で来たらめんどくさいやつだなw

 

 

だから自分がやる時には、

表面の反発を通り抜けてカラダの奥まで届かせる。

それによって、

筋肉を緊張させることなく、

効果的に緩められる。

この、

「抵抗を通り抜ける力」

を使うことが技術だと思う。

そのためには、

腕の力をギリギリまで抜く必要がある。

腕を動かさずに押す。

それが上達の近道。

 

 

動画では、杖を介して相手に力を伝えている。

腕で杖を押しても、

驚くほど力は伝わらない。

重心移動と腹背の脱力で、

カラダの重さを正しく杖の先に集める。

この集められた重さ=重みを使うことで、

筋力とは質の違う力を伝えられる。

 

整体やマッサージをやる人には、

ぜひ一度体験してほしい。

 

 

脱力トレーニング 重心移動 肘

 

「えっ、そんなところ抜くんですか?」

 

脱力トレーニングを指導していて、

ホントによく言われるのがコレ。

今やってることは単純で、

自分の重心の落下点を脱力でコントロールすること。

ただ、そのためにどこをどう脱力するかが、

今までのカラダの使い方では想像できない。

 

 

普通の人は、よほどセンスのある人以外、

必ずと言っていいほどカラダの末端から動き出す。

手、頭、足。

足ならまだマシで、大抵は手か頭。

視覚と手の運動感覚だけで生活している。

脱力トレーニングでは、

そこを根底から変えていく。

 

 

動画では、重心移動の力を肘から相手に伝えている。

ポイントは2つ。

 

重心移動においては、

足で体重を支えるのではなく、

中心から脚が落下する感覚で立つこと。

この切りかえができると、

体重を推進力に転換できる。

 

肘から相手に伝える際には、

おへその横あたりを、

へそ側に向かって脱力する。

この時、腰が引けたり重心が戻ったりしないこと。

力が横や後ろに漏れなければ、

ちゃんと相手に伝わるから。

 

この、おへその横を脱力することと、

相手に力が伝わることの関係性が、

普通の感覚では理解できない。

それで、

「えっ、そんなところ抜くんですか?」

って言っちゃうわけ。

でも、そんなところを抜くの。

それでちゃんと伝わるから。

面白いでしょ?

 

脱力トレーニング 脚から重みを伝える 立位

 

脱力トレーニングではまず、

重力を自分の力として使うことを学んでいる。

重力は地球上のあらゆる場所で、

全てのモノにあまねく働いている。

つまりこの世界で生きる以上、

重力を力として使えることが、

力学的に最も合理的だと言える。

 

 

重力を力として使うためには、

自分の重さを感じて、

それを意図的にカラダの各部分に集める必要がある。

この意図的に集められた重さのことを、

武颯塾では「重み」と呼んで、

普通に体重を掛けた重さと区別している。

 

 

重みによる力の特徴の一つは、

力が対象を通り抜ける感覚が得られること。

これによって、

相手からの反発に過剰に反応することなく、

ロスの少ない力の伝達が出来る。

 

動画では、前蹴りの形で相手に力を伝えている。

当然この時は、自分の足に重みを集めて、

それをミット越しに放り出す。

面白いことに、

これを初めて受けるとみんな笑い出す。

見た目と衝撃のギャップがおかしいんだろうね。

受けてみたい人はぜひ一度、

お越しくださいw

 

脱力トレーニング 肩と胸の脱力

 

言葉と心の関係を研究している、

大学の先生と話をした。

なかなかゆっくり話す時間を取れなかったので、

興味深い話をたくさん聴けて嬉しかった。

先生の立場から見ても、

武颯塾でやっている脱力トレーニングは、

心理療法としての大きな価値があるらしい。

 

 

話をしていて共感したのは、

「ポジティブな言葉を使おう」

というアプローチの効果と限界について。

もちろん普段使う言葉を変えることで、

物事の捉え方が変わるのは分かる。

ただ反面、

ポジティブな言葉を使おうと思った時点で、

そうじゃない自分もいるってこと。

この本音の自分を変えなければ、

本当の意味で変わることは出来ない。

 

そこで役立つのが身体感覚のトレーニング。

特に、自分の中心と言葉を繋げる感覚。

この感覚が分かると、

自分の言葉にこれまで感じたことのない実感がこもる。

大げさに言えば、魂が入る。

今までなんて薄っぺらい言葉を使っていたのかと、

今さら気づいてしまった。

こういうアプローチの脱力トレーニングも、

面白いかもしれない。

 

 

前置きが長くなったけど、

今回は肩と胸の脱力トレーニング。

しっかりと両肩を掴まれても、

楽に自由に動けることの確認。

ポイントは肩関節と胸鎖関節の脱力を維持したまま、

腹背の緩みで肩を動かすこと。

肩はお腹の変形で勝手に動かされるのであって、

自分で肩を動かそうとしてはいけない。

これが上手く出来るようになると、

腕の使い方が格段にレベルUPする。

ぜひ、試してみてほしい。

 

脱力トレーニング 足首を掴まれて歩く

 

スポーツでも他のことでも同じだと思うけど、

何かを本気で学ぼうと思ったら、

教わってる時間以外の取り組み方について、

ちゃんと考えないとね。

教わってる時間なんて、

生活時間の何十分の一かじゃない。

学んだことを生活の中にどう取り入れるか。

当たり前って言われるだろうけど、

それが上達のカギだと思う。

 

 

例えば脱力トレーニング。

いくらトレーニング中に力を抜いていても、

普段の生活で緩もうとしなければ、

成果はなかなか出てこない。

反面、ただ緩もうとするだけなら、

いつだってどこだって誰だって出来る。

 

 

動画は足首を掴まれて歩く練習。

途中引っかかって上手く足が出ないように、

結構難しいトレーニングじゃないかと思う。

足までしっかりと重みが通ってないと、

最初の一歩さえ出せない。

 

師範からよく言われるのが、

「ほとんどの芸事には歩く練習がある」

ということ。

二本足で立って移動するのは、

それだけ高度で難しい運動なんだ。

 

だけど、多くの人は普段歩いている。

難しい運動だけどとりあえずの形にはなってる。

だからやろうと思えば、

毎日トレーニングは出来る。

あとは、やるかやらないか。

才能があるかないかなんて、

それをやってからの話だよね。

 

 

脱力トレーニング 下腿を固定して動く

 

カラダをうまく使える人と、

そうじゃない人の違い。

特に外から見たときの違いは、

姿勢や動きから伝わる情報量の差として感じられる。

それは例えるならファミコンとプレステの違い。

ファミコンはドットが粗くてカクカク動くけど、

プレステは精細で滑らかに動く。

 

 

外から見た情報量の差は、

そのままカラダに対する意識量の差と言える。

自分のカラダをどれだけ正確に、

現実に近い形で意識できているか。

偏りなく。

途切れなく。

 

 

動画はパントマイム練習の脚版。

下腿を動かさないようにカラダを動かしている。

ほとんどの人は、脚への意識が圧倒的に薄い。

普段歩いている人を何気なく見ても、

正直脚がスカスカに見える。

偉そうに書いてる私自身、

サッカーをしていたのが嘘みたいに、

脚への意識が薄かった。

これじゃあ膝を痛めるのも仕方ない。

 

脚へ意識を向けるトレーニングにも、

このパントマイム練習は役に立つ。

特に下腿を固定することで、

中心から動くことと、

股関節を大きく使うことを覚えられる。

すると見ての通り脚に力が正しく伝わり、

バランスを崩しにくいカラダになる。

ぜひ、やってみてほしい。

 

脱力トレーニング 前腕を固定して動く

 

脱力トレーニングは、

自然の法則に適応するためのトレーニング。

ありのままの自分でいるためのトレーニング。

それは残念だけど、

「そのままの自分で良いんだよ」

という意味じゃない。

 

 

これはホントに不思議なことだけど、

普通に生きてるとなぜか、

自然の法則から離れていってしまう。

私を含めてみんなそう。

そうやって離れていくことを、

人間らしさだと思ってさえいる。

ということは、

普通やってしまうことの逆をやれば、

自然の法則に近づくことがある。

 

 

動画では、身体の横方向に、

奥側の手で力を伝えている。

例によって筋力では力を入れにくい形なので、

最初はうまく押せない。

すると普通は、

「どこをどう動かせばうまく押せるか」

を考えるよね。

その発想を逆転させてみる。

「どこを動かさなければうまく押せるか」

 

今回の場合、

前腕を動かさない形でやってみた。

パントマイムみたいな感じに。

前腕の位置を固定してなおかつ動くためには、

肩と肘の関節を自由に回転させなくてはいけない。

どちらか片方でもうまく回らないと、

身体の動きが伝わってしまう。

これがうまくできるということは、

肩と肘が脱力できてるといえる。

 

このパントマイムのもう一つの効果は、

動かす順番を変える点にある。

普通、腕から力を出そうとすると、

どうしても腕を最初に動かしてしまう。

前腕を固定する意識を持つことで、

体幹や脚の動きが腕に伝わって動く感覚を、

身に付けることができる。

 

 

 

脱力トレーニング 中心から脚を揺らす

 

カラダの力を抜けないのは、

力を抜くと弱くなると思ってるから。

弱くなる脱力しか知らないから。

自分の中心を自覚出来れば、

頑張らなくてもカラダは強い。

 

 

だから、

力を抜く練習と筋力に代わる力を感じる練習は、

基本的にセットでやる。

筋力を抜かないと筋力以外の力は感じられないし、

それを感じないことには脱力は進まない。

 

 

動画はカラダの中心を揺らすことで、

脚から相手に力を伝えている。

脚力で相手を動かそうとしても、

両足を抱えられた状態では、

まともに力が入らない。

ところがカラダの中心を感じて、

足裏まで伝わるように中心を揺らせれば、

相手の予想を大きく上回る力が伝わる。

 

こういう形で相手を動かせることに、

意味があるわけじゃない。

中心を感じて脱力すれば、

今の自分では信じられない力が出る。

そのことを体験して納得することで、

自分のカラダを信じられるようになる。

頑張らなくて良いと、

本気で思えるようになる。

そこに脱力トレーニングの意味があると思う。