脱力トレーニング 合気上げの研究

 

まずはじめに断わっておきますが、

私は合気道経験者ではありません。

ですから自分がやっていることを、

「これが合気上げです」

などと言うつもりは全くないです。

ただ、「押さえられた腕をどう上げるか」について、

「力の抜き方」と「効果的な身体の動かし方」の観点から、

「こういうやり方もありますよね」

という例を挙げているわけです。

当然、違うやり方もありますし、

偉大な先人達とは異なるものかもしれません。

そこはまだまだ研究中の身ということでお許しください。

 

 

今回の動画で説明していることを簡単にまとめると、

「腕を挙げるときにはまず、肩甲骨を下げてください」

という一言になります。

この時ポイントになるのは「肩甲骨を下げる」事であって、

「肩を下げる」わけではないという点です。

これは一見すると同じような形に見えるので、

ともすると勘違いしてしまいます。

しかし見た目は似ていても、

運動としては全く別物なので注意が必要です。

 

「肩甲骨を下げる」運動の初動は、

首から肩甲骨の内側にかけての力を抜くことです。

具体的には僧帽筋、肩甲挙筋、菱形筋を緩めます。

するとそれぞれの筋肉が緩んで伸びるため、

肩甲骨は外下方へと滑り落ちます。

この動きが腕、特に肘へと伝わる事で、

腕に独特の重さ、力強さが出るのです。

 

一方「肩を下げる」運動は多くの場合、

脇を締める事で行われます。

具体的には広背筋や棘下筋が収縮します。

これはある局面においては、

確かに腕を強くする作用がある反面、

腕の運動性を大きく損なってしまいます。

特に今回のような腕を前に上げる動作においては、

肩甲骨が前方へ滑ることで、

肘をしっかりと支える必要があります。

しかし広背筋が収縮してしまうと、

前方への移動に対してのブレーキとして働きます。

したがって、

「肩を下げる」ことと「肩甲骨を下げる」ことを、

ハッキリ区別してトレーニングしたいのです。

 

ちなみに下の動画は、

いわゆる達人と呼ばれる人の合気上げです。

 

 

この方がされていることの全容は分かりませんが、

少なくとも肩甲骨がダラっと落ちていることは、

明確に見て取れます。

私のような凡人はまず、

こうやって見たら分かる部分から真似することと、

しっかりと考えてトレーニングすることが、

上達のための条件だと思っています。

 

脱力トレーニング 沈墜勁:肩からの垂直落下

 

脱力トレーニングの目的の一つは、

重力を力として扱えるようになることです。

特に水平から下向きへの力を出したい場合、

自分の身体や使っている道具、

或は力を加えたい対象に働いている重力を扱えるかどうかで、

発揮できる力には大きな差が出ます。

 

 

 

今回の動画のポイントは、

腕を使って相手を真下に崩しているにもかかわらず、

自覚的に使っている部分は、

前に出した腕側の体幹のみだということです。

肩や胸、肋骨、腹、腰、骨盤を上から順に、

滑らかに落としていく。

その動きによって、

体幹にかかる重力が自分の腕から相手の方へと次々に加算されていき、

相手の予想よりも大きな力が加わったことで崩れます。

 

とはいっても、

実際に肩や胸が落ちてしまうわけではありません。

ここが脱力トレーニングの難しい所なのですが、

重要なのは肩や胸が落ちる方向が分かっていること、

落ちようとしている力を感じ続けられることであって、

実際に落ちているかどうかが問題ではないのです。

 

ところがそこを勘違いして、

背中や脇、腹の筋肉を固めることで肩を下げてしまうと、

思っているように相手が崩れてくれません。

そのやり方は確かに普通に腕を押し下げるよりは強くなりますが、

まだまだ相手の予測範囲の力しか出せません。

むしろ筋肉を固めたくなる部分の力を抜くことで、

それぞれのパーツが時間差で落下する際の加速度が加算されて、

相手の予測を超えた力となるのです。