脱力トレーニング 腕立て伏せの考察

 

最近、筋トレの本を1冊買った。

もちろん、脱力トレーニングのために。

普通は筋力をつけるためにやる運動を、

今の自分はどれだけ力を抜いて出来るか。

そんなところに興味があったのだけれど、

意外な発見もあった。

 

 

本に書かれていたトレーニングは、

大きく分けて6種類。

1.プッシュアップ(腕立て伏せ)

2.スクワット

3.レッグレイズ(脚上げ腹筋)

4.プルアップ(懸垂)

5.リバースプッシュアップ(逆立ち腕立て)

6.ブリッジ

で、今回の話題は腕立て伏せ。

 

 

多くの人は腕立て伏せを、

押す力を鍛える運動だと思ってるんじゃないかな。

より重たいものを動かせるようになったり、

あるいはパンチ力が上がるとか。

もちろん手首・肘・肩の腱や靭帯が鍛えられるので、

衝撃に対する耐久力はアップする。

なのでトレーニングの効果が無いとは言わない。

けれども腕立て伏せを力学的に見れば、

物を押したりパンチを打つのとは、

最も重要な部分で逆の動きをしていることが分かる。

 

腕立て伏せとは腕の力を使って、

床から自分の重心を遠ざける運動だ。

それに対して、

重い物を押したり強いパンチを打つコツは、

自分の重心を対象に近づけていくこと。

つまり、

対象と自分の重心の関係性が、

正反対の運動になっているわけ。

これを正しく理解してトレーニングしないと、

せっかく鍛えたのに弱くなった、

なんてことも起こりうる。

気をつけないとね。

 

 

不利な状況を受け入れる訓練

 

今回のトレーニングも寝技系。

マウントを取られたところからのスタート。

思い返せば少年時代。

友人とケンカになって馬乗りになられると、

すぐに降参していた。

下になった時点で、

もうどうしようもない気持ちになって、

頑張ることを諦めていたんだ。

 

 

別に子供の頃のケンカに限った話ではない。

多分私は、

「不利な状況」そのものを、

受け入れたくないのだ。

有利な状況では調子のいいことを言っても、

不利になった途端に投げ出してしまう。

そんな私にとって武術の修練は、

とてもいいリハビリになっている。

 

 

相手に馬乗りになられるというのは、

間違いなく不利な状況ではある。

慣れていないと、

相当な圧迫感を感じると思う。

とは言え、何もできないわけじゃない。

不利な状況を把握し受け入れ、

正しくトレーニングすれば、

動画のように相手を制することも充分に可能だ。

ちなみにこの動画におけるポイントは、

相手は掴んでいる手首しか抑えられないことだ。

手も肘も肩も胸も抑えられてはいない。

その状況を理解して受け入れれば、

実は全然抑えられていない。

それがカラダの感覚として分かれば、

下から相手をコントロールすることもできる。

 

もちろん普通に生活していたら、

馬乗りで殴られることはそうそう無い。

ただ、こんな圧倒的不利に思える状況でも、

諦めずに戦えるという経験は、

きっと他の場面でも役立つんじゃないか。

私は武術にそんなことを期待している。

 

 

カラダの中心から末端を動かす

 

「不自由って良いですねぇ‼︎」

今日の修練で印象に残った一言。

不自由があるから自由が分かる。

どこかで聞いたような言葉だし、

アタマでは理解できる。

でもそれと、

カラダを通して体感することは、

全く違う話なんだ。

 

 

脱力トレーニングの要点の一つに、

「カラダの中心から末端を動かす」

というものがある。

腕を動かす時に腕を使わず、

脚を動かす時に脚を使わない。

股関節や腹背といったカラダの中心からの動きを、

腕や脚に伝えて動かすのだ。

もちろん口で言うほど簡単ではない。

ほとんどの人にとって、

腕や脚を動かす方が、

股関節や腹背を動かすよりも楽で自由。

トレーニングと分かっていても、

慣れ親しんだ末端からの動きをしてしまう。

そこで役立つのが、

腕や脚を動かさずに動く練習。

敢えて不自由な状況に身を置くわけだ。

 

(写真と動画は以前のものです)

 

修練としては、

前腕や下腿を相手に持ってもらい、

そこを全く動かさないようにカラダを動かす。

ある種、パントマイムのような動きになる。

前腕を固定して動くために肩と肘が、

下腿を固定して動くために膝と股関節が、

それぞれ自由に回転する感覚を学べる。

この修練でさらに重要なのは、

体幹と腕や脚の位置関係を、

「体幹の側から感じ取る」こと。

すると、

「カラダの中心から末端を動かす」

ことが少しずつ分かってくる。

 

このような敢えて腕や脚に制限をかける修練で、

結果的に不自由だった体幹が自由になる。

それを実際に体験すると冒頭のように、

「不自由って良いですねぇ‼︎」

なんて口走っちゃうw

確かに、不自由があるから自由が分かる。

面白いなぁ。

 

「基本」は、それ自体が「成果」。

 

あいまいな記憶を頼りに書くと、

昔、「ドラゴン桜」という作品の中で、

ある勉強の進め方について描かれていたと思う。

それは、

「1日目に教科書の1ページから5ページまで進めたら、

2日目もやっぱり1ページから始めて、

進めるところまで進む」

というもの。

これは勉強に限らず、

学び方全般に当てはまると思う。

 

 

 

「基本が大事」なんて、

今更言われなくても分かってる。

みんなそう言うし、

口に出さなくても態度には出てるw

でも、

「なんで基本が大事なのか?」

を真剣に考えてみたことがあるだろうか。

というわけでここからは、

それについての私の考え。

 

多分多くの人は、

「基本があって応用がある」

と思ってるんじゃないかな。

確かに何かを学ぶ上ではその順番で間違いない。

でも、教える側、いや、研究する側に立てば、

全くの逆だってことがわかる。

 

例えば重力の話。

私たちは、

「重力があるからリンゴが落ちる」

と思ってる。

もちろんその通りなんだけど、

ニュートン先生にとってはそうじゃない。

「リンゴが落ちるから重力がわかる」

という順番。

別に重力に限らず物事はすべて、

まず現象があってそこから理論が導き出される。

技術においても同じで、

様々な技法を正確に把握した上で初めて、

何が基本になっているのかが分かる。

それはつまり、

「基本はそれ自体が成果である」

ってこと。

 

なので、

教科書の最初に書いてあることをより深く、

より正確に理解することが、

実は物事を学ぶ上で最も効率がいい。

 

 

脱力(によって力を出す)という、

普通に生活していればまずやらない、

ある意味特殊なカラダの使い方。

それを学びさらには教える上で、

自分なりに気をつけ工夫しているは、

「できる限り失敗しにくい単純なやり方」

を探して提示すること。

なのでその単純なやり方を確実にできるまで、

徹底的に修練したいし、

して欲しいわけなんだけど…。

 

ちなみに動画の場合、

「抑えられた腕を伸ばせる」

ようになるためには、

「抑えられた肩や胸を自由に動かす」

練習をしっかりやればいいと思う。

 

 

寝技と護身術

 

脱力トレーニングではよく、

寝技の形で練習をする。

寝技のメリットは、

立つことに必要な脚や体幹の筋収縮も、

完全になくせる点にある。

力を抜いて動く感覚、

カラダが流体である実感が得やすいのだ。

 

 

寝技トレーニングのもう一つの意味は、

護身術としての側面だ。

本当に自分の身を守りたいのなら、

中途半端に相手を攻撃するよりも、

とにかく逃げるべき。

寝技で学ぶのは、

どれだけ強い力で抑えられても、

カラダのどこかは動くということ。

動く部分を効果的に使って、

カッコ悪くてもとにかく立ち上がる。

護身術は本来、

こういう泥臭いものだと思う。

 

 

動画では、

馬乗りで両肩を抑えられた状態から、

相手をひっくり返している。

もちろん現実には両肩を抑えられはしないし、

こんなにキレイには返らない。

ただこの練習で知りたいのは、

肩と胸の力を抜いて流体になれば、

肩を抑えられはしないこと。

このように一見、

しっかりと押さえ込まれているように見えても、

自由に動ける選択肢はある。

それをカラダで学ぶことが、

脱力トレーニングの一つの意義かな。

 

 

人のカラダの触りかた

 

鍼灸学校に通ってて整骨院で勤めてる方が、

わざわざ京都から修練に来てくれてる。

彼はもちろん、

治療が上手くなるために来てる。

にもかかわらず、

私が教えるのは人を転がすようなことばかり。

(たまにはマッサージもやりますがw)

それでも彼は勤めている整骨院で、

患者さんからの評価が上がり続けているらしい。

 

 

こんなことを言うと文句を言われそうだけど、

カラダの触り方を知らない人が多い。

というか、根本的なところで勘違いしてる。

それは、

人のカラダを固体としてしか感じられないから。

自分のカラダも他人のカラダも、

固体の感覚で扱っている。

固体の自分が固体の相手を圧したり揉んだり。

力がぶつかって反発するのは当たり前。

 

 

けれどもみんな知っているとおり、

カラダの6割〜7割は水分で出来ている。

つまり固体か流体かで言えば、

より流体に近いわけだ。

なので本来、

人のカラダに触れる行為は、

流体の自分と流体の相手が触れ合うということ。

だから圧したり揉んだりする力は、

反発せずに浸透する。

 

この自分も相手も流体だという感覚を、

アタマの理解だけでなく、

カラダを通して体感、体得する。

そんなトレーニングをやっていれば、

マッサージの評価が上がるのは自然な成り行き。

だってそもそも、

触りかたが全然違うのだから。

もちろんマッサージ以外にも、

いろいろ役に立ちまっせ♪

 

 

脱力トレーニング 寝技の有効性

 

カラダの使い方を学ぶ上で、

寝技はとても有効だと思う。

立っている時のような筋収縮がいらないし、

地面と触れている部分が大きいから、

地面からの抗力を使いやすい。

しかも触れている部分の大半は体幹。

体幹の脱力とコントロールが、

必然的に磨かれていく。

 

 

寝技で重要なものをいくつか挙げてみよう。

まずは全身の脱力。

カラダの力が抜けると、

実際の体重以上に重く感じる。

重さとは純粋な質量だけでなく、

動かしにくさとも大きく関係する。

ただ重たいというだけで、

格闘技的には大きなアドバンテージがあることは、

ボクシングや柔道の階級制度が証明してる。

 

次に重心のコントロール。

地面との接触面が広いため、

重心の自由度が高い。

同じような姿勢に見えても、

重心の位置を変えるだけで、

相手に対する影響は大きく変わる。

また、自分の重心を正確にコントロールできると、

相手からの影響も受けにくい。

 

 

最後に、動画で紹介する脚の使い方。

寝技の特徴は両脚を自由に使える点にある。

脚を上手く使えるほど、

寝技は確実に強くなる。

ただ、ここまで覆い被さられると、

普通の脚力では相手を動かせない。

そもそも膝を完全屈曲させると、

筋力では仕組み上力が入らない。

そこで、脚の筋力以外の力を使う。

腹背や股関節の脱力が出来ると、

脚を押さえられても骨盤周りは動かせる。

そこを効果的に動かすことで、

地面からの抗力を脚へと伝える。

この脚の使い方ができると、

脚一本を間に挟むだけで、

寝技で下になった時の安心感が違う。

 

以上、寝技で重要だと思うポイントを挙げたけれど、

脱力も重心コントロールも脚の使い方も全部、

立ってやるスポーツにも役に立つ。

そういう意味で寝技のトレーニングは、

多くのスポーツに応用できると考えている。

 

 

脱力トレーニング Take turns

 

今日は順番の話。

たまに書くけど、

俺は順番を抜かされるのがキライだ。

いや、好きな奴はいないだろうけど。

もちろん仕方ない場合はある。

2車線から1車線に合流するような場合だ。

それは交互に進んで行くしかない。

ただ、明らかにわかる順番を抜かす奴がいる。

老若男女問わず。

アタマおかしいと思う。

 

 

だけど、もっとひどい事がある。

例えば駅のホーム。

自分が一番に来て並んでたら、

短い編成の電車で並んだ場所には止まってくれず、

自分が乗ったのは一番後、

なんてパターン。

似たようなことは、

スーパーのレジなんかでもあるよね。

そんな時に思わない?

「正しい順番はこれじゃないだろ‼︎」って。

 

 

で、カラダの話。

カラダを動かすのにも正しい順番がある。

動画では相手の手首を掴んで倒してるんだけど、

この時の動く順番が重要。

普通は掴んでいる手をいきなり動かそうとする。

このやり方では、腕の力しか使えない。

そこで順番を変える。

カラダの中心を動かすことで、

結果として手を動かす。

手はあくまで、

中心の動きによって動かされるだけ。

すると手を動かすことにおいても、

全身の力を使うことができる。

結果、より大きな力を発揮できる。

 

中心の動きが末端へ伝わる。

達人は別として、

まずはこれが正しい順番。

だけどほとんどの人は、

この順番を守れていない。

手足が中心の順番を抜かしていることにさえ、

気づいていない。

だから、正しい順番で動かすだけで、

思ってもみない力が出せたりするわけ。

Take turns.

 

 

 

脱力トレーニング 腕相撲

 

修練生に、

「腕相撲とか強いですか?」

なんて聞かれたから、

何年か振りにやってみた。

 

 

やってみて分かったことは、

アームレスリングだとルール違反になっちゃうw

私の技術レベルでは肘が動いてしまうから。

ただ、この細い腕で普通に筋力で頑張るのとは、

違うチカラを使えるなって思った。

 

 

動画で見て欲しいポイントは、

相手の腕と肩の位置関係はほとんど変わってないこと。

これは、私が相手の手を動かそうとしていないから。

相手は私の手を動かそうとしてるけど、

私は相手をカラダごと転がそうとしている。

だから、相手の手と肩の位置関係が変化しない。

 

普通の腕相撲だと、

負ける側の手が動かされる。

お互いに相手の手の甲を台に付けようとするから、

当然といえば当然。

ただ、組んでみると、

カラダがそうは動きたがらない。

それだと技が掛からないことを、

体感で分かってるから。

自分の重心を動かすことで、

相手の重心を崩す。

そうやって意識すれば、

腕相撲さえも脱力トレーニングになる。

 

 

脱力トレーニング モノと同じように腕を動かす

 

「モノをうまく使うコツは、

自分のカラダの延長として動かすこと」

というようなことを、

以前に師範から言われたことがある。

別に師範からじゃなくても、

同じような話は聞いたことがあるかもしれない。

例えばお箸。

違う文化の人から見れば、

「なんて難しいことをやってるんだ‼︎」

って言われることだけど、

私たちにとっては使えることが当たり前。

それは、手や指の延長として使う感覚があるから。

 

 

野球やテニス、ゴルフなんかでは、

「腰で振れ」と言われる。

腕の力だけで振ってしまうと、

「手打ちになってる」とかなんとか指導される。

バットやラケット、クラブなどが、

腕じゃなくて腰で振るものだということは、

スポーツをやってればみんな知ってる。

 

 

逆説的に考えてみよう。

お箸が手や指の延長だとしたら、

バットやラケット、クラブは腕の延長と言えるよね。

で、その腕の延長を振る時には、

腕じゃなくて腰で振った方が良いことは、

みんなの共通認識だった。

じゃあ、腕自体を振るとしたら、

どこで振ったら良いのだろうか?

そう、腰で振ったら良い。

 

さて。

例えとして分かりやすいから、

バットなどのスイングの話をしたけど、

別に振るという動作に限った話じゃない。

腕を動かすこと全てにおいて、

腕を腕で動かすことは、

運動力学的に不合理なんだ。

つまり冒頭のセリフをひっくり返して、

「腕を上手く使うコツは、

モノと同じように動かすこと」

とも言えるってわけ。

面白いよね。