寝技と護身術

 

脱力トレーニングではよく、

寝技の形で練習をする。

寝技のメリットは、

立つことに必要な脚や体幹の筋収縮も、

完全になくせる点にある。

力を抜いて動く感覚、

カラダが流体である実感が得やすいのだ。

 

 

寝技トレーニングのもう一つの意味は、

護身術としての側面だ。

本当に自分の身を守りたいのなら、

中途半端に相手を攻撃するよりも、

とにかく逃げるべき。

寝技で学ぶのは、

どれだけ強い力で抑えられても、

カラダのどこかは動くということ。

動く部分を効果的に使って、

カッコ悪くてもとにかく立ち上がる。

護身術は本来、

こういう泥臭いものだと思う。

 

 

動画では、

馬乗りで両肩を抑えられた状態から、

相手をひっくり返している。

もちろん現実には両肩を抑えられはしないし、

こんなにキレイには返らない。

ただこの練習で知りたいのは、

肩と胸の力を抜いて流体になれば、

肩を抑えられはしないこと。

このように一見、

しっかりと押さえ込まれているように見えても、

自由に動ける選択肢はある。

それをカラダで学ぶことが、

脱力トレーニングの一つの意義かな。

 

 

人のカラダの触りかた

 

鍼灸学校に通ってて整骨院で勤めてる方が、

わざわざ京都から修練に来てくれてる。

彼はもちろん、

治療が上手くなるために来てる。

にもかかわらず、

私が教えるのは人を転がすようなことばかり。

(たまにはマッサージもやりますがw)

それでも彼は勤めている整骨院で、

患者さんからの評価が上がり続けているらしい。

 

 

こんなことを言うと文句を言われそうだけど、

カラダの触り方を知らない人が多い。

というか、根本的なところで勘違いしてる。

それは、

人のカラダを固体としてしか感じられないから。

自分のカラダも他人のカラダも、

固体の感覚で扱っている。

固体の自分が固体の相手を圧したり揉んだり。

力がぶつかって反発するのは当たり前。

 

 

けれどもみんな知っているとおり、

カラダの6割〜7割は水分で出来ている。

つまり固体か流体かで言えば、

より流体に近いわけだ。

なので本来、

人のカラダに触れる行為は、

流体の自分と流体の相手が触れ合うということ。

だから圧したり揉んだりする力は、

反発せずに浸透する。

 

この自分も相手も流体だという感覚を、

アタマの理解だけでなく、

カラダを通して体感、体得する。

そんなトレーニングをやっていれば、

マッサージの評価が上がるのは自然な成り行き。

だってそもそも、

触りかたが全然違うのだから。

もちろんマッサージ以外にも、

いろいろ役に立ちまっせ♪

 

 

脱力トレーニング 寝技の有効性

 

カラダの使い方を学ぶ上で、

寝技はとても有効だと思う。

立っている時のような筋収縮がいらないし、

地面と触れている部分が大きいから、

地面からの抗力を使いやすい。

しかも触れている部分の大半は体幹。

体幹の脱力とコントロールが、

必然的に磨かれていく。

 

 

寝技で重要なものをいくつか挙げてみよう。

まずは全身の脱力。

カラダの力が抜けると、

実際の体重以上に重く感じる。

重さとは純粋な質量だけでなく、

動かしにくさとも大きく関係する。

ただ重たいというだけで、

格闘技的には大きなアドバンテージがあることは、

ボクシングや柔道の階級制度が証明してる。

 

次に重心のコントロール。

地面との接触面が広いため、

重心の自由度が高い。

同じような姿勢に見えても、

重心の位置を変えるだけで、

相手に対する影響は大きく変わる。

また、自分の重心を正確にコントロールできると、

相手からの影響も受けにくい。

 

 

最後に、動画で紹介する脚の使い方。

寝技の特徴は両脚を自由に使える点にある。

脚を上手く使えるほど、

寝技は確実に強くなる。

ただ、ここまで覆い被さられると、

普通の脚力では相手を動かせない。

そもそも膝を完全屈曲させると、

筋力では仕組み上力が入らない。

そこで、脚の筋力以外の力を使う。

腹背や股関節の脱力が出来ると、

脚を押さえられても骨盤周りは動かせる。

そこを効果的に動かすことで、

地面からの抗力を脚へと伝える。

この脚の使い方ができると、

脚一本を間に挟むだけで、

寝技で下になった時の安心感が違う。

 

以上、寝技で重要だと思うポイントを挙げたけれど、

脱力も重心コントロールも脚の使い方も全部、

立ってやるスポーツにも役に立つ。

そういう意味で寝技のトレーニングは、

多くのスポーツに応用できると考えている。

 

 

相撲部屋に行ってきた。

 

 

フェイスブックには写真をあげたけど、

先日、佐渡ヶ嶽部屋の力士さん達に、

脱力トレーニングを紹介してきた。

間近で見るとみんなホントに大きくて、

最初はどうなることかと思ったw

けれどいざ始めてみたら、

ビックリするほど素直に話を聞いてくれた。

書きながら思い返しても、

じんわりとあったかい気持ちになる。

 

今回このようなご縁を頂いたのは、

塩田さんという佐渡ヶ嶽部屋のトレーナーの方から。

他にも多くのスポーツ選手について、

トレーニングの指導をしていたり、

健康関連のビジネスをしていたりする。

 

この人のスゴイところはその行動力。

初めて会ったのは二週間ほど前。

最初のメールで、

「今日、脱力トレーニングに行きたいです」

ときて、

2回目のトレーニングの後には、

「一緒に佐渡ヶ嶽部屋に行きましょう」

となった。

凡人の私としてはただ驚くばかりだったけど、

彼によれば、

「絶対に力士の役に立つ」

という確信があったらしい。

 

このあたりが、

多くのプロスポーツ選手を見ている彼と、

そうじゃない私との大きな違い。

プロの選手に会う機会のない私としては、

「自分ができる程度のことは、

プロなら大抵できるんじゃないの?」

って思っていた。

だから最初に書いた通り、

実際にカラダに触れてみるまでは、

どうなることやらと不安だった。

 

でも力士の方と組ませてもらって、

塩田さんの言ってることがよく分かった。

私が修練している武術・脱力は、

かなり特殊なもののようだ。

カラダをかなり鍛えている方でも、

それを脱力して使えるとは限らない。

たとえプロの選手であっても、

力の伝達ロスを修正してあげれば、

パフォーマンスの向上が見込める。

と言うよりもむしろ、

彼らのような成績と収入が直結する人達にこそ、

脱力トレーニングが役に立つ。

それが感覚として分かった。

 

これって当たり前だけど、

自分達だけでトレーニングしている間は、

なかなか気付けない。

そうかもしれないとは思いつつも、

確信が持てない。

実際に足を運んで、

必要としてくれる人に会ってはじめて分かること。

だから今回お話を頂いた塩田さん、

そして佐渡ヶ嶽部屋の皆さんには、

本当に感謝しています。

ありがとうございました。

 

 

脱力トレーニング 魅力的な所作

 

学生時代、

落研に入っていた彼女。

先日、久しぶりに寄席を観にいったらしい。

大阪、天満の繁昌亭。

そう言えば、

神戸の新開地にも作るって話があったような。

どうなったんだろう?

 

 

私は普段から寄席を観に行くような落語ファン、

ではない。

テレビでもほとんど見ない。

ただ、初めて生で見た時のことは覚えている。

扇子を茶碗に見立ててお茶を飲む、

ただそれだけの所作に惹きつけられた。

 

 

魅力的な所作とそうじゃないものの違い。

それは、含まれる情報量の差にある。

見ている側が受け取る情報量が多いほど、

その所作は魅力的に映る。

つまり、自分を魅力的に見せようと思ったら、

所作に込める情報量を増やせばいい。

一つ一つの所作において、

何を感じ、意識しているのか。

 

例えば先の、お茶を飲むシーン。

お茶は茶碗にどれだけ入っているのか?

重さは?

温度は?

茶碗の硬さや表面の質感は?

そういった様々な状況に意識を向けてみる。

これが最初のステップ。

さらに次は、

その時のカラダの感覚に意識を向ける。

茶碗の重さをどこでどうやって支えているのか。

お茶の温かさが口から喉、お腹へと広がる感覚。

こうやって意識を向けてみると、

ただお茶を飲むだけの所作からも、

様々な情報のやり取りができる。

 

落語や演劇、お茶やお花の稽古に限らず、

上達する人はこの意識の向け方が上手い。

そして、地道にやり続ける。

トレーニングなんて、

みんなそんな地味なもの。

でも、その積み重ねがいつしか、

ただお茶を飲むだけで惹きつけられる、

魅力的な所作を生むんだ。

 

 

脱力トレーニング Take turns

 

今日は順番の話。

たまに書くけど、

俺は順番を抜かされるのがキライだ。

いや、好きな奴はいないだろうけど。

もちろん仕方ない場合はある。

2車線から1車線に合流するような場合だ。

それは交互に進んで行くしかない。

ただ、明らかにわかる順番を抜かす奴がいる。

老若男女問わず。

アタマおかしいと思う。

 

 

だけど、もっとひどい事がある。

例えば駅のホーム。

自分が一番に来て並んでたら、

短い編成の電車で並んだ場所には止まってくれず、

自分が乗ったのは一番後、

なんてパターン。

似たようなことは、

スーパーのレジなんかでもあるよね。

そんな時に思わない?

「正しい順番はこれじゃないだろ‼︎」って。

 

 

で、カラダの話。

カラダを動かすのにも正しい順番がある。

動画では相手の手首を掴んで倒してるんだけど、

この時の動く順番が重要。

普通は掴んでいる手をいきなり動かそうとする。

このやり方では、腕の力しか使えない。

そこで順番を変える。

カラダの中心を動かすことで、

結果として手を動かす。

手はあくまで、

中心の動きによって動かされるだけ。

すると手を動かすことにおいても、

全身の力を使うことができる。

結果、より大きな力を発揮できる。

 

中心の動きが末端へ伝わる。

達人は別として、

まずはこれが正しい順番。

だけどほとんどの人は、

この順番を守れていない。

手足が中心の順番を抜かしていることにさえ、

気づいていない。

だから、正しい順番で動かすだけで、

思ってもみない力が出せたりするわけ。

Take turns.

 

 

 

脱力トレーニング 腕相撲

 

修練生に、

「腕相撲とか強いですか?」

なんて聞かれたから、

何年か振りにやってみた。

 

 

やってみて分かったことは、

アームレスリングだとルール違反になっちゃうw

私の技術レベルでは肘が動いてしまうから。

ただ、この細い腕で普通に筋力で頑張るのとは、

違うチカラを使えるなって思った。

 

 

動画で見て欲しいポイントは、

相手の腕と肩の位置関係はほとんど変わってないこと。

これは、私が相手の手を動かそうとしていないから。

相手は私の手を動かそうとしてるけど、

私は相手をカラダごと転がそうとしている。

だから、相手の手と肩の位置関係が変化しない。

 

普通の腕相撲だと、

負ける側の手が動かされる。

お互いに相手の手の甲を台に付けようとするから、

当然といえば当然。

ただ、組んでみると、

カラダがそうは動きたがらない。

それだと技が掛からないことを、

体感で分かってるから。

自分の重心を動かすことで、

相手の重心を崩す。

そうやって意識すれば、

腕相撲さえも脱力トレーニングになる。

 

 

脱力トレーニング モノと同じように腕を動かす

 

「モノをうまく使うコツは、

自分のカラダの延長として動かすこと」

というようなことを、

以前に師範から言われたことがある。

別に師範からじゃなくても、

同じような話は聞いたことがあるかもしれない。

例えばお箸。

違う文化の人から見れば、

「なんて難しいことをやってるんだ‼︎」

って言われることだけど、

私たちにとっては使えることが当たり前。

それは、手や指の延長として使う感覚があるから。

 

 

野球やテニス、ゴルフなんかでは、

「腰で振れ」と言われる。

腕の力だけで振ってしまうと、

「手打ちになってる」とかなんとか指導される。

バットやラケット、クラブなどが、

腕じゃなくて腰で振るものだということは、

スポーツをやってればみんな知ってる。

 

 

逆説的に考えてみよう。

お箸が手や指の延長だとしたら、

バットやラケット、クラブは腕の延長と言えるよね。

で、その腕の延長を振る時には、

腕じゃなくて腰で振った方が良いことは、

みんなの共通認識だった。

じゃあ、腕自体を振るとしたら、

どこで振ったら良いのだろうか?

そう、腰で振ったら良い。

 

さて。

例えとして分かりやすいから、

バットなどのスイングの話をしたけど、

別に振るという動作に限った話じゃない。

腕を動かすこと全てにおいて、

腕を腕で動かすことは、

運動力学的に不合理なんだ。

つまり冒頭のセリフをひっくり返して、

「腕を上手く使うコツは、

モノと同じように動かすこと」

とも言えるってわけ。

面白いよね。

 

 

脱力トレーニング 2本の足で立つ

 

学生時代から武術をやってるけど、

蹴り技はずっと苦手だった。

中学、高校とサッカーをしてきたにもかかわらず。

だから突きの修練は繰り返しやったけど、

蹴りの修練はサッパリ。

今思えば、本当に何も分かってなかったと思う。

 

 

武術の世界には、

「立ち3年」という言葉がある。

ちゃんと立てるまでに3年の修練がいるって事。

それだけ、立つことは難しい。

物が安定して立つためには、

最低3点で支えなきゃならない。

にもかかかわらず、

人は2点の支えで立っている。

なるほど、難しいわけだ。

 

 

そこで、蹴り技の修練が役に立つ。

ちゃんと蹴れるということは、

足に体重を正確に載せられるということ。

しかも蹴り技は基本的に片足立ちになる。

1本の脚でカラダを支えながら、

もう一本の脚を自在に扱う。

2本脚で立つことよりも、

さらにハードルを上げてるわけ。

そんな蹴り技の修練は、

そのまま立つことの上達へとつなげられる。

 

繰り返しになるけど、

2本脚で立つことは本来、

とても高度な技術。

多くの人は普通に立っているから、

そんなこと考えもしないけど、

立つことの上手い下手には大きな差がある。

うまく立てるようになれば、

その分だけ立って行うことすべてが上手くなる。

立って行うことすべてが楽になる。

立って行う、ありとあらゆることが。

 

立ち方、学んでみない?

 

 

脱力トレーニング 下段蹴り

 

腕はどこからが腕なのだろう。

脚はどこからが脚なのだろう。

そのあたりの感覚が曖昧になってきた気がする。

 

 

解剖学的には、肩関節から先が腕だし、

股関節から先が脚なのは間違いない。

それは人である限り、

誰に対しても当てはまる定義。

ただ、「腕や脚をどこから動かすのか?」

という機能的側面から見たときには、

人によって大きな違いがある。

 

 

脚に限って言えば、

膝から下を脚だと勘違いしている人は多い。

膝を動かすことが、

イコール脚を動かすことだと思っている。

そんな自覚はないままに。

もちろん脚を動かすにあたって、

膝が重要な役割を果たすのは間違いない。

ただそれは、

足先へと流れる力の方向を転換するため。

決して膝の曲げ伸ばしが力の発生源ではない。

 

動画では、

脚を相手の太腿に付けた状態から、

力を伝えている。

この形で筋力を使って膝を伸ばそうとすれば、

自分が後ろに動いてしまう。

おヘソあたりの動きを脚に伝えることで、

相手からの反発の少ない力を加えている。

コツは、蹴り足を徹底的に脱力すること。

本当に、ただ置いてるだけ。

強く蹴りたければ、決して蹴らない。

面白いよね。