養体修練(練気武颯拳基本修練その1)

今回からは、
練気武颯拳の基本修練をご紹介します。

最初にご紹介するのは、

「養体修練」

です。

まずはどのような修練なのかを見てみましょう。

「えっ、たったこれだけ!?」
と思われるかもしれませんね。

やっていることは、
ただ力を抜いて立っているだけ。

脚や腕を持ち上げたり、
横から押されたりしても、
ただ力を抜いて立ち続ける。

見ての通り、とても地味な修練です。
ですが、本当に奥の深い修練です。

「ただ力を抜いて立つ」ことができないのです。
一度やってみるとわかります。

別に無理やり持ち上げようとするわけでもないのに、
むしろ、丁寧にじっくりと持ち上げてくれているのに、

なぜか力んでしまうのです。

その力みを感じて、
それがどこから生まれるのかを観察する。

そして少しでも力みを取り去り、

「ただ力を抜いて立つ」

ことに近づこうとするのです。

「力を抜いて立っているだけで、
身体が勝手に外部からの刺激に対して最適な反応をする」

という状態を目指す修練、
それが「養体修練」なのです。

練気武颯拳の修練は、

「養体に始まり養体に終わる」

と言っても過言ではありません。

この「養体」が崩れてしまうと、
どんな技も「武颯拳」の技とは言えません。

逆に、「養体」が崩れない人が行う動きは、
全て「武颯拳」の技だと言えます。

突き、蹴り、投げ、寝技、全ての修練の前提となるのがこの、

「養体修練」

なのです。

「脱力」によって期待できる効果(その3)

3.新しい感覚に気づくことができる

脱力感覚を磨く修練は、
自分に対する注意観察力を研ぎ澄ませていきます。

その結果として知覚能力が上がり、
今までにない感覚に気づくことがよくあるのです。

その最たるものが、
「気(のようなもの)」だと言えるでしょう。

ただ、私自身が気功の修練をしているわけではないので詳しくは触れないでおき、
もう少し具体的な感覚についてお話します。

脱力感覚を磨くことで得られる感覚の一つに、

「力が通る」

という感覚があります。

感覚を言葉で伝えるのは難しいのですが、
出来るだけわかりやすく説明したいと思います。

今、目の前に壁があるとイメージしてください。
大きく立ちはだかる、しっかりとした壁です。

あなたはこの壁を両手で精いっぱい押します。
ですが、もちろんビクともしません。

近くに壁があるという人は、
実際にやってみてください。

壁が近くに無い人も、別に壁でなくても構いません。
力いっぱい押しても全く動かないものならOKです。

イメージしたり、押してみたりできましたか?

この時、あなたは何を感じたでしょうか。

まずは壁からの抵抗ですよね。

自分が壁を押すことにより、
両手に壁からの抵抗として圧がかかります。

他には、腕や肩の筋肉の緊張。
人によっては背中、腰、お尻、脚の緊張が感じられたと思います。

多くの場合はこのように、
自分の「力み」と物体からの「反作用」を感じます。

そしてそれらの感覚を、
「力」だと思っているのです。

ところが脱力感覚を感じられるようになると、
「力」に対する認識が変わります。

「力み」や「反作用」ではなく、
作用している「力」そのものを感じるようになるのです。

上の例においては「反作用」だけでなく、
壁の中に向かって働く自分の「力」を感じられます。

自分の「力」が、
長さと方向を持った「ベクトル」として認識されるのです。

その「ベクトル」は、
壁が動こうが動くまいが関係なく作用しています。

あなたが壁を押している限り、
壁にもあなたにも「ベクトル」は働いているのです。

学校の物理で習った、
「作用・反作用の法則」というやつです。

脱力感覚を修練することで、
物理法則がその通りに感じられるようになります。

この感じを身近な言葉に置き換えると、

「力が通る」

という表現になるのです。

では、改めて壁を押してみてください。
もちろんイメージでも構いません。

その時に、自分に返ってくる反作用と同じだけ、
壁にも「力」が通っていることを思い出してください。

そして、通っている「力」の方を、
より感じようとしてみましょう。

きっと、最初とは違う感覚を感じて頂けると思います。

こうやって少しずつ自分の感覚が変わっていくことも、
武颯拳を修練する楽しみの一つだと思います。