こんにちは、ワタルです。
今日は、前回記事の続きの内容で、
「自意識と刺激の同一化」
ということについて書いていきます。
前回記事では、
いわゆる「合気上げ」の初歩的なやり方として、
「腕を挙げるのではなく肘を落とす」
ということを書きました。
手首を思い切り上からつかまれた状態でも、
肘をちゃんと動かすことが出来れば腕は挙がります。
ところが人の意識というのは不思議なもので、
手首を掴まれていると、
「手首を動かさなければ!!!」
と勝手に思ってしまうのですね。
だからほとんどの場合、
肘を動かすことができません。
肘を掴まれている訳ではないのに。
その理由は、「自分」という意識が掴まれた手首だけになってしまい、
手首以外の自分自身を見失ってしまうからなのです。
つまりこの場合は、
「自分」と「手首」を「同一化」してしまっているのですね。
そしてこのような「自分」という意識の「同一化」は、
なにも手首を掴まれた時にだけ起きるわけではありません。
例えば何か心配事があるとき。
身体のどこかが痛い時。
本当に様々な種類の刺激に対して、
人は自分を「同一化」してしまう。
「心配事」や「痛み」と、
「自分」を「同じもの」として扱ってしまうのですね。
だから、それ以外の部分が見えなくなってしまう。
見えないもの、認識できないものは、
当然ながら使うことができません。
結果として、
自分が本来持っている力を発揮することが出来なくなるのです。
けれどもこの「自意識と刺激の同一化」に気づき、
そこから一歩引いて自分自身を見ることが出来ればどうでしょう。
たしかに心配事はあるし、
身体の調子が悪いかもしれない。
でも、
「そうではない部分」
が必ずあるということに、
気づけるようになるのです。
当たり前ですよね。
何かが心配で心配でたまらないということは、
それ以外のことは心配していないということ。
腰が本当に痛い時には、
肩コリのことは忘れているものなのです。
であるならば、心配事や痛み以外の部分に「自分」がいれば、
それらを客観的に見ることができる。
そうなれば、
今までよりもずっと落ち着いた対処ができますよね。
もちろん実際には口で言うほど簡単ではありませんが、
少しでもそこに近づくためのトレーニングは出来ます。
それが、
いわゆる「合気上げ」と呼ばれる技術の練習なのです。
この練習は、
ただ手首を思い切り掴まれた状態で腕を挙げるだけ。
失敗したからといって痛い思いをするわけではないし、
出来たからといって自慢できるようなものでもない。
けれども手首と「同一化」した「自意識」を「切り離す」という修練は、
日常のあらゆる場面で役に立ちます。
なぜなら人は常に、
「自分」と「何か」を「同一化」してしまうから。
そしてそれが、
自分の能力を制限してしまっているから。
その制限から解放されるために、
「刺激」と「自意識」を「切り離す」。
そういう目的意識を持って修練を行うことで「合気上げ」は、
「ただ腕を挙げるトレーニング」
から、
「意識を進化させるトレーニング」
へと昇華するのです。
(了)
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