脱力トレーニング 上虚下実 双推手

 

最近、知り合う人に恵まれていると感じる。

特に脱力トレーニングに来てくれる人は、

スポーツ、武術、治療と分野はそれぞれだけど、

何かに懸命に取り組まれている。

そういう人達の役に立てている感覚は、

とても心地よいものだ。

 

 

今回は武術好きな人が来てくれたので、

「推手」という太極拳のトレーニングをやった。

流派によって細かいルールは違うけど、

要は相手のバランスを崩して足を動かさせたら勝ち。

 

 

名前が「推す手」と書くし、

実際に手を合わせて行うから、

どうしても腕を動かして相手を崩したくなる。

それが大きな間違い。

むしろカラダの中心から足を動かすことに、

徹底して意識を向けていい。

 

太極拳には上虚下実という要訣がある。

ざっくり言えば、上半身はリラックスして、

下半身をちゃんと使いましょうってこと。

ところが日常生活を振り返るとどうだろう。

スマホ、パソコン、ゲーム、テレビ、本。

目と耳と手ばかり使ってる。

要訣とは真逆の下虚上実だよね。

 

子供の頃、

「口ばっかり動かさないで手を動かしなさい‼︎」

って叱られなかった?

脱力トレーニング的には、

「手ばっかり動かさないで足を動かしなさい‼︎」

って感じかな。

スポーツをやってたり、頭痛や肩こりの人は特にね。

 

 

脱力トレーニング 中心を整える 立位

 

神戸駅の構内から、南に少し出たところ。

3歳くらいの女の子が走り回っている。

少し離れたところにいるお母さんが、

とてもうんざりした顔で女の子を呼びつけ、

腕を掴み、引きずるように連れて行こうとしていた。

それを横目に見ながら、

改札を通ってホームに向かった。

 

 

女の子はとても元気で活発そうに見えた。

あの年頃の子供は大抵がエネルギーの塊で、

自由に動くカラダをしている。

けれども親はそうじゃない。

カラダが重く、立って歩くことさえしんどそうだ。

大きなお世話だけど、

運動能力に限って言えば、

親が子供のブレーキになる可能性は大きい。

 

別に今日見た人に限った話ではなく、

ほとんどの大人は立ち姿や歩き姿がすでに、

しんどそうに見える。

自分の体重を、脚の筋力で頑張って支えてる。

頑張って地面を蹴って歩いてる。

そんなこと、する必要が全く無いのに。

 

立つために必要なのは、

脚の筋力で体重を支えることじゃない。

自分の中心を、足裏の上に乗せるだけでいい。

この立ち方が出来るだけで、

自分のカラダがとても軽く感じられる。

 

 

そして面白いことに、

この自分で軽く感じるカラダは、

他人が動かそうとした時に、

とても重たくすることができる。

自分の中心が整って足裏に乗っていれば、

カラダは安定して簡単には崩れない。

動画は腕を掴んで持ち上げようとされても、

中心感覚をブレさせないことで、

カラダのバランスを保つトレーニングをしている。

 

自分のカラダが安定して、

なおかつ軽く楽に動けるとしたら、

きっと子供に対する対応も変わるんじゃないか。

そんな事を考えさせられ光景だった。

 

 

脱力トレーニング 体重の乗せ方 立位 手

 

最近、歌が上手くなった気がする。

気のせいだって?

確かにそうかもしれないw

別に音程を取るのが上手くなったわけじゃない。

ただ、声に体重を乗せる感覚が、

少しずつ感じられるようになってきた。

やっと、武術とそれ以外が繋がりつつある。

だから、修練がホントに面白い。

 

 

体重の乗せ方について続けて書いてきたけど、

ポイントは重心のコントロールと、

発生した重みの集め方。

 

具体的にトレーニングするなら、

お腹の奥から骨盤を自由に動かす練習と、

お腹や腰の力を徹底的に抜く練習。

武颯塾ではこれを、

「骨盤旋回」「腹背の緩み」

という形で基本修練と位置付けている。

 

 

動画ではミットに向かって突いているけど、

見て欲しいのは骨盤から下の動き。

骨盤が落下する動きで力を発生させて、

それをお腹の脱力で手に伝えている。

そう、肘打ちの時と全く同じ。

 

体重の乗せ方が分かると、

それが肩、肘、手と場所が変わっても、

同じ原理で動くことができる。

運動の仕方だけでなく、

声の出し方まで変わる。

この応用範囲の広さこそ、

脱力トレーニングの魅力だと思う。

 

脱力トレーニング 体重の乗せ方 立位 肘

 

タイトルとは関係ないけど、

初めて脱力トレーニングに参加するなら、

マンツーマンの指導が効果的だと最近思う。

これまでの人生で積み重ねた動きや感覚。

それと全く異なるものを伝えるのだから、

「そもそも違うことをやるんですよ」

って何度も示すことが重要。

複数人でのレッスンだと、

ここを人に任せる部分が出てきちゃう。

それがどうにも、もどかしい。

ある程度理解してからだと、

複数人でやるメリットもあるんだけどね。

個人レッスンコースを作ろうかと検討中。

 

 

一般的な人の立ち方は、

意識しているかどうかに関わらず、

脚の筋力で骨盤から上を支えている。

この立ち方だと、

膝を脱力した時に意識が膝に集まり過ぎて、

肝心の重心の移動や、

それに伴い発生した力に意識を向けづらい。

 

それに対して骨盤から脚に動きを伝える感覚で立つと、

落下運動自体を重心に近いところで行うので、

重心移動や力そのものを認識しやすい。

つまり、体重の乗った運動をするためには、

立つ感覚自体を変えるのが手っ取り早い。

 

 

 

動画は、股関節と膝の脱力で重心を斜め前に滑らせ、

発生した運動量をお腹の脱力で肘から伝えている。

このような肘打ちの出来不出来を、

パッと見には分からない立ち方が左右してたりする。

そこにカラダの使い方の面白さがあると思う。

 

脱力トレーニング 体重の乗せ方 立位 肩

 

駅の階段を上っていると、

人の足音が気になる。

そんなにガンガン地面を叩かなくても、

もっと楽に上がれるのに。

 

 

普段、どれだけ楽に立てているか。

どれだけ楽に歩けているか。

それはスポーツをやっている人はもちろん、

そうじゃない人にとっても、

カラダの開発度合いの重要な指標となる。

 

 

脱力トレーニングで目指すのは、

自然と調和したカラダの在り方。

ただ、一口にそう言っても、

あまりにも漠然とし過ぎている。

そこでまずはカラダの力学的側面を、

自然界に働く最大の力である重力と調和させる。

 

カラダを重力と調和させるためには、

カラダに働く重力を感じなくちゃいけない。

そのためにはどうしても脱力して、

筋力を使う割合を減らしたい。

筋力で立てば立つほど、

筋肉を使っている感覚を重力感覚だと、

勘違いしてしまうから。

 

重力感覚のトレーニングが進むほど、

動作に余計な筋力を使わなくてすむ。

重力を筋力の代わりに活用できるから。

ちなみに動画の場合は、

股関節と膝を脱力して重心を落下させ、

その力をお腹の脱力で肩から相手に伝えている。

こういうある意味特殊な動きと、

階段の上り方といった普段の生活動作。

それらが結びつく所に、

脱力トレーニングの面白さ感じる。

 

脱力トレーニング 重心移動 股関節

 

例えばテレビでマラソンを見ていて、

どこに注目して見るだろうか。

順位、表情、腕の振り、足の運び、歩幅、など、

いくつもポイントはあるだろう。

ちなみに私は、

「どれだけ体重を感じさせないか」

に興味がある。

 

 

脱力トレーニングにおいて、

重要かつ難易度の高い、

股関節の脱力。

カラダの中心にある股関節を脱力して、

柔らかく自由に動かす。

 

 

体重を狙ったところに乗せるために、

カラダの重心を思い通りにコントロールする。

そのためには、

出来るだけ重心に近いところを動かせるようになりたい。

つまり重心のすぐ下にある股関節の脱力は、

体重をコントロールするための必須科目。

 

股関節が上手く脱力出来ると、

脚に重さが乗るようになる。

動画はその重さを力として使っている。

おもしろいことに、

これが上手くなるほどに、

見た目は軽く見えるようになる。

 

理由は脚の筋力を使う割合が減ってくるから。

実は脚の力感が、

見た目の重さにつながっている。

股関節の脱力が進み、

体重を足に上手く乗せられるほどに、

見た目は軽やかになってくるってわけ。

 

マラソンに限らずいろんなスポーツを、

「どれだけ体重を感じさせないか」

という視点で見るのも面白いよ。

 

脱力トレーニング 座位 手 側方

 

脱力トレーニングで目指すのは、

「力」の概念を変革すること。

頑張る以外の力の出し方、使い方を、

アタマとカラダの両面から理解すること。

ギューッと力こぶを作らなくても、

今、ここにある力の存在を感じ取ること。

 

 

体重を上手く乗せるために重要なポイントの一つが、

お腹や腰の脱力感覚。

特に今回のような真横に力を出す場合、

脇腹をどうやって緩めるかがカギになる。

自分の重心を相手から離すことなく、

脇腹が凹むように上手く脱力出来ると、

体重が上手く手の方へ流れだす。

 

 

ちなみに脇腹の脱力は、

ストレスの軽減にとても役立つ。

東洋医学には「胸脇苦満」という言葉があり、

ストレスがたまると脇が詰まるという。

これは肝の病症と言われていて、

特に怒りの感情と関係が深い。

腹が立ったときに、

脇や肋骨、お腹の横がギューってなる人は、

この胸脇苦満の予備軍かもしれない。

そういう意味では、

怒りっぽくてストレスを感じやすい人にも、

脱力トレーニングをオススメするよ。

 

脱力トレーニング 半座位 手 前方

 

 

脱力トレーニングにおいては、

筋力ではなく重力を力の発生源として使う。

その第一歩として学ぶことは、

狙った場所に効果的に体重を乗せる技術。

今回は座位で、正面へ出した手に体重を乗せた。

モデルの修練生が按摩指圧マッサージ師の卵なので、

ちょうどピッタリな修練方法だ。

 

 

修練のポイントは、

股関節の脱力で膝に体重をストンと落とすこと。

この体重が落下する力を、

お腹の脱力で手が前に放り出される方向に転換する。

手をどの方向に放り出すかは、

お腹の脱力の仕方でコントロールする。

 

注意して見て欲しいのは腕の形。

普通のやり方で腕に体重を乗せようとすると、

たいていは肘を伸ばして腕を突っ張る。

腕をつっかえ棒のように使おうとする。

対して脱力トレーニングでは、

腕はゴムホースのように扱う。

だから動画でも肘は楽に曲がっている。

この楽に力が抜けた腕だからこそ、

効果的に体重を乗せることができる。

 

整体やマッサージをするならぜひ、

この腕の使い方を覚えて欲しい。

相手が気持ちいいだけでなく、

自分も楽に無理なく仕事ができるから。

 

脱力トレーニング 体重の乗せ方 半座位 背中

 

脱力トレーニングの当面の目的は、

力を抜いて力を出すこと。

筋肉を力の発生源としてではなく、

動きの伝達器官として扱う。

 

じゃあ、筋力に代わる力の源は何か?

 

 

スポーツをやっていれば、

「体重を乗せる」

という表現を使うと思う。

パンチならば拳に。

バッティングならばバットに。

シュートならば蹴り足に。

 

体重の乗せ方の上手い下手が、

そのスポーツにおける上手い下手に直結する。

もちろん力の出し方に限っての話。

ただバットを早く振ってボールを遠くに飛ばせれば、

それだけで野球が上手いわけではない。

とはいえ、重要なポイントの一つには違いない。

実際、優れた選手は体重の乗せ方が上手い。

 

ということは、優れた選手になるほど、

体重を力の発生源として使う割合が増える。

脱力トレーニングにおいてもまずは、

体重の乗せ方を学ぶ。

 

 

当たり前のことだけど、

体重は地球の重力がカラダを下向きに引っ張るからある。

つまり体重の乗せ方を学ぶことは、

重力の感覚を養うこと。

 

その最も基本になるのが落下運動。

カラダのどこをどうやって脱力して支えを外せば、

どんな方向に落ちていくのか。

 

カラダはたくさんの関節がある、

複雑な振り子構造をしている。

支えの外し方によって、

様々な方向に力が発生する。

その力を狙ったところに伝えられるようになることが、

体重の乗せ方が上手くなるってこと。

 

まずは動画のように、

体幹に近いところから始めると分かりやすいと思う。

 

 

脱力流体トレーニング 後ろ倒れ 長座

 

 

人を枕に寝てる写真、ではない。

どうせ枕になってもらうなら、女性を希望w

それはともかく。

 

 

四つ這いの相手に、

脱力して長座で背中から力を伝える。

この姿勢で背筋力で相手を倒せたらスゴイけど、

普通の人は多分無理。

だから、ちゃんと脱力出来てるかどうかのチェックになる。

 

ポイントは腹背と股関節の脱力。

ここを緩めることで、

カラダを流体として扱うことができる。

これは、脱力して動くための一番の基本。

つまりこの、ただ寝転がるだけの修練が、

あらゆる脱力トレーニングのベースとなる。

 

ちなみにお腹や腰の状態は、性格にも影響してる。

腰が反りやすい人は、怒りっぽい人が多い。

腰が丸くなりやすい人は、怖がりが多い。

腹背のコントロールを学ぶことで、

ニュートラルな自分になれたらいいな、と思う。