脱力トレーニング 体重の乗せ方 立位 肩

 

駅の階段を上っていると、

人の足音が気になる。

そんなにガンガン地面を叩かなくても、

もっと楽に上がれるのに。

 

 

普段、どれだけ楽に立てているか。

どれだけ楽に歩けているか。

それはスポーツをやっている人はもちろん、

そうじゃない人にとっても、

カラダの開発度合いの重要な指標となる。

 

 

脱力トレーニングで目指すのは、

自然と調和したカラダの在り方。

ただ、一口にそう言っても、

あまりにも漠然とし過ぎている。

そこでまずはカラダの力学的側面を、

自然界に働く最大の力である重力と調和させる。

 

カラダを重力と調和させるためには、

カラダに働く重力を感じなくちゃいけない。

そのためにはどうしても脱力して、

筋力を使う割合を減らしたい。

筋力で立てば立つほど、

筋肉を使っている感覚を重力感覚だと、

勘違いしてしまうから。

 

重力感覚のトレーニングが進むほど、

動作に余計な筋力を使わなくてすむ。

重力を筋力の代わりに活用できるから。

ちなみに動画の場合は、

股関節と膝を脱力して重心を落下させ、

その力をお腹の脱力で肩から相手に伝えている。

こういうある意味特殊な動きと、

階段の上り方といった普段の生活動作。

それらが結びつく所に、

脱力トレーニングの面白さ感じる。

 

脱力トレーニング 重心移動 股関節

 

例えばテレビでマラソンを見ていて、

どこに注目して見るだろうか。

順位、表情、腕の振り、足の運び、歩幅、など、

いくつもポイントはあるだろう。

ちなみに私は、

「どれだけ体重を感じさせないか」

に興味がある。

 

 

脱力トレーニングにおいて、

重要かつ難易度の高い、

股関節の脱力。

カラダの中心にある股関節を脱力して、

柔らかく自由に動かす。

 

 

体重を狙ったところに乗せるために、

カラダの重心を思い通りにコントロールする。

そのためには、

出来るだけ重心に近いところを動かせるようになりたい。

つまり重心のすぐ下にある股関節の脱力は、

体重をコントロールするための必須科目。

 

股関節が上手く脱力出来ると、

脚に重さが乗るようになる。

動画はその重さを力として使っている。

おもしろいことに、

これが上手くなるほどに、

見た目は軽く見えるようになる。

 

理由は脚の筋力を使う割合が減ってくるから。

実は脚の力感が、

見た目の重さにつながっている。

股関節の脱力が進み、

体重を足に上手く乗せられるほどに、

見た目は軽やかになってくるってわけ。

 

マラソンに限らずいろんなスポーツを、

「どれだけ体重を感じさせないか」

という視点で見るのも面白いよ。

 

脱力トレーニング 座位 手 側方

 

脱力トレーニングで目指すのは、

「力」の概念を変革すること。

頑張る以外の力の出し方、使い方を、

アタマとカラダの両面から理解すること。

ギューッと力こぶを作らなくても、

今、ここにある力の存在を感じ取ること。

 

 

体重を上手く乗せるために重要なポイントの一つが、

お腹や腰の脱力感覚。

特に今回のような真横に力を出す場合、

脇腹をどうやって緩めるかがカギになる。

自分の重心を相手から離すことなく、

脇腹が凹むように上手く脱力出来ると、

体重が上手く手の方へ流れだす。

 

 

ちなみに脇腹の脱力は、

ストレスの軽減にとても役立つ。

東洋医学には「胸脇苦満」という言葉があり、

ストレスがたまると脇が詰まるという。

これは肝の病症と言われていて、

特に怒りの感情と関係が深い。

腹が立ったときに、

脇や肋骨、お腹の横がギューってなる人は、

この胸脇苦満の予備軍かもしれない。

そういう意味では、

怒りっぽくてストレスを感じやすい人にも、

脱力トレーニングをオススメするよ。

 

脱力トレーニング 半座位 手 前方

 

 

脱力トレーニングにおいては、

筋力ではなく重力を力の発生源として使う。

その第一歩として学ぶことは、

狙った場所に効果的に体重を乗せる技術。

今回は座位で、正面へ出した手に体重を乗せた。

モデルの修練生が按摩指圧マッサージ師の卵なので、

ちょうどピッタリな修練方法だ。

 

 

修練のポイントは、

股関節の脱力で膝に体重をストンと落とすこと。

この体重が落下する力を、

お腹の脱力で手が前に放り出される方向に転換する。

手をどの方向に放り出すかは、

お腹の脱力の仕方でコントロールする。

 

注意して見て欲しいのは腕の形。

普通のやり方で腕に体重を乗せようとすると、

たいていは肘を伸ばして腕を突っ張る。

腕をつっかえ棒のように使おうとする。

対して脱力トレーニングでは、

腕はゴムホースのように扱う。

だから動画でも肘は楽に曲がっている。

この楽に力が抜けた腕だからこそ、

効果的に体重を乗せることができる。

 

整体やマッサージをするならぜひ、

この腕の使い方を覚えて欲しい。

相手が気持ちいいだけでなく、

自分も楽に無理なく仕事ができるから。

 

脱力トレーニング 体重の乗せ方 半座位 背中

 

脱力トレーニングの当面の目的は、

力を抜いて力を出すこと。

筋肉を力の発生源としてではなく、

動きの伝達器官として扱う。

 

じゃあ、筋力に代わる力の源は何か?

 

 

スポーツをやっていれば、

「体重を乗せる」

という表現を使うと思う。

パンチならば拳に。

バッティングならばバットに。

シュートならば蹴り足に。

 

体重の乗せ方の上手い下手が、

そのスポーツにおける上手い下手に直結する。

もちろん力の出し方に限っての話。

ただバットを早く振ってボールを遠くに飛ばせれば、

それだけで野球が上手いわけではない。

とはいえ、重要なポイントの一つには違いない。

実際、優れた選手は体重の乗せ方が上手い。

 

ということは、優れた選手になるほど、

体重を力の発生源として使う割合が増える。

脱力トレーニングにおいてもまずは、

体重の乗せ方を学ぶ。

 

 

当たり前のことだけど、

体重は地球の重力がカラダを下向きに引っ張るからある。

つまり体重の乗せ方を学ぶことは、

重力の感覚を養うこと。

 

その最も基本になるのが落下運動。

カラダのどこをどうやって脱力して支えを外せば、

どんな方向に落ちていくのか。

 

カラダはたくさんの関節がある、

複雑な振り子構造をしている。

支えの外し方によって、

様々な方向に力が発生する。

その力を狙ったところに伝えられるようになることが、

体重の乗せ方が上手くなるってこと。

 

まずは動画のように、

体幹に近いところから始めると分かりやすいと思う。

 

 

脱力流体トレーニング 後ろ倒れ 長座

 

 

人を枕に寝てる写真、ではない。

どうせ枕になってもらうなら、女性を希望w

それはともかく。

 

 

四つ這いの相手に、

脱力して長座で背中から力を伝える。

この姿勢で背筋力で相手を倒せたらスゴイけど、

普通の人は多分無理。

だから、ちゃんと脱力出来てるかどうかのチェックになる。

 

ポイントは腹背と股関節の脱力。

ここを緩めることで、

カラダを流体として扱うことができる。

これは、脱力して動くための一番の基本。

つまりこの、ただ寝転がるだけの修練が、

あらゆる脱力トレーニングのベースとなる。

 

ちなみにお腹や腰の状態は、性格にも影響してる。

腰が反りやすい人は、怒りっぽい人が多い。

腰が丸くなりやすい人は、怖がりが多い。

腹背のコントロールを学ぶことで、

ニュートラルな自分になれたらいいな、と思う。

 

 

脱力トレーニング ラケットから力を伝える

 

タイトルとは直接関係ないけどw

久しぶりに、修練でミットを使った打撃をやった。

これはこれで、力の浸透度合いを測るのに役立つ。

というわけで、神戸に一つ持ってきた。

 

 

打撃の難しさは、

反動に対して身構えてしまうところ。

インパクトの瞬間に力が入ってしまう。

多分、普通のスポーツだと、

ギリギリまで脱力して、

インパクトの瞬間にだけ力を入れるんじゃないかな。

だけど勁力を使った打撃においては、

インパクトの瞬間、

さらに力を抜く必要がある。

力を抜いて、

対象との接触面の向こう側へと勁力を通す。

反動に対して身構えてしまうと、

これが出来ない。

 

 

この、インパクトの瞬間に力を抜く技術は、

もちろん卓球やテニスなど、

ボールを打つ競技にも応用できる。

ラケットがボールに当たる直前、

力のベクトルを延長させる方向に脱力する。

それによって、対象からの反動の少ない、

効果的な力の伝達が可能になる。

まあ簡単に言えば、

楽に強いボールを打てるようになるってこと。

 

そのために必要なのは、

どこをどう脱力すれば、

どんなベクトルが流れるのかという感覚。

それを体験的に理解するのが、

脱力トレーニングの一つの目標だと言える。

残念ながらこればかりは、

言葉や文章で伝えることが出来ない。

ぜひ、カラダに直接触れて、

感じ取ってもらいたい。

 

 

脱力トレーニング 脚から力を伝える

 

 

一説には、脚は腕の3倍の筋力があるらしい。

多少乱暴に扱っても、

たいていの目的は達せられる。

だから、うまく使えるようになるのは難しい。

 

 

そこで、普通に力を入れただけでは、

到底できないような形で修練をする。

今回の修練では、しっかりと抱えられた脚を、

相手ごと左右に動かしている。

曲げたり伸ばしたりは筋力も出しやすいけど、

横方向に力を出すのは難しい。

 

そこで、股関節を脱力して、

足先、さらには相手のカラダまで、

正確に力を通すトレーニングを行う。

脚の使い方が上手くなると、

サッカーやセパタクローに役立つだけじゃない。

人が立って動く以上、

必ず脚と地面との間で力のやりとりが行われる。

立つ、歩く、走る、跳ぶ。

全ての動作において。

つまり、脚の使い方が上手くなると、

運動能力全般が底上げされるってこと。

ほぼ全てのスポーツにおいて、

パフォーマンスの向上が期待できる。

 

ただ最初に書いたように、

脚のトレーニングはただの筋トレになってしまいやすい。

ちゃんと相手がいる状況で、

お互いにチェックしながら行うことが、

他のトレーニング以上に大切だと思う。

 

 

脱力トレーニング 腕を鞭化する

 

 

脱力トレーニングの基本となる、腕の脱力。

腕を鞭のように使うことで、

力をダイレクトに対象に伝えることができる。

 

 

人の脳における運動野の8割を、

手を含む腕が占めているという研究があるらしい。

実際、生活において最も動かすことの多い部分だし。

ということは、腕の使い方を変えることは、

カラダの使い方全体に波及する可能性が高い。

 

それに、脱力感を取りやすい部位でもある。

肩からぶら下がっているので、

落下感を感じやすいから。

手を挙げて、力を抜けば落下する。

リンゴがなくても、

ニュートン先生じゃなくても、

重力の働きを感じられる。

 

ただ、頻繁に使うということは、

力みやすい部分だとも言える。

パンチやスイングなど、

勢いよく対象に当てるものは特に。

なので、対象に触れたところから始めると、

脱力した腕から力を伝える感覚が分かりやすい。

 

 

姿勢を整えることで変わるもの

 

子供の頃から、ずーっと猫背だった。

武術を始めて最初に取り組んだのが、姿勢の改善。

1年くらい意識し続けて、なんとか形だけは整えた。

 

 

思い返せば、猫背については、

ことある度に注意されていた。

親に。

習字の先生に。

剣道の先生に。

でも、その時はなおす必要性を感じなかった。

誰一人として、良い姿勢が何で必要なのか、

分かるように教えてはくれなかった。

 

それが、武術をやるようになって、

初めてちゃんと教えてもらえた。

そして修練の中に、姿勢を整えるトレーニングが、

システムとして組み込まれていた。

 

 

姿勢を整えることで何が変わるのか。

運動面で言えばまず、力学的に安定する。

結果として、余計な力を使わずに動ける。

また、外からの力に対しても強くなる。

このことだけを取り上げても、

スポーツをやるならまず、

姿勢の改善に取り組むべきじゃないだろうか。

 

次に、ものの見え方が変わる。

猫背になって頭が前に出る程に、

視野はどんどん狭くなる。

これもスポーツをやる上では致命的。

普通にしてれば見えるはずのものが見えなくなる。

最近は視覚の訓練法もあるみたいだけど、

それ以前にやるべきことが姿勢の改善じゃないかと。

 

そして最後に、見られ方が変わる。

これは二人で向かい合ってみれば分かるのだけど、

姿勢を崩したり整えたりするだけで、

人に与える印象が随分と変わる。

言葉は悪いけど、圧力みたいなものが変化する。

不必要な上下関係ができたりもする。

そう、別にスポーツをやってなくても、

普段の生活にも姿勢の影響は出てるんだ。

 

ちなみに私の母親は、

姿勢を意識するようになっただけで、

酷かった肩コリが解消した。

肩コリに悩む人も、

とりあえず姿勢を整えてみたらどうかな。