こんにちは、ワタルです。
久しぶりのブログ更新となる今回は、
「パーキンソン病と脱力」
というテーマについて書こうと思います。
パーキンソン病の患者さんは、
平成20年時点で約13万9000人いると言われています。
これは難病指定されている疾患の中で、
潰瘍性大腸炎に次いで多い数字だとのこと。
そして現在、私も同病の患者さんを一人、
治療させてもらっています。
治療を始めたのは3カ月ほど前で、
治療頻度は2~3週間に1回のペース。
治療の効果に対する印象としては、
良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、
全体として症状は改善に向かっているというところです。
鍼灸学校の学生時代に、
同病の患者さんを診せて頂く機会はありました。
けれども実際に仕事として治療にあたるのは、
今回が初めてです。
ですからまずは、
パーキンソン病についての勉強からやり直しました。
何冊かの本を読んだのですが、
病気そのものについて一番わかりやすかったのはこの本。
病気の原因や症状だけではなく、
脳のはたらきについての説明にも大きくページを割いているので、
パーキンソン病がどういう仕組みの病気なのかが分かりやすいです。
これらの本によると、
パーキンソン病とは、
「中脳黒質の変性によるドーパミン不足を原因とする、
随意運動に対する過剰な抑制である」
と言えます。
言葉だけでは分かりづらいと思いますので、
簡単な図を載せます。
(クリックすると拡大されます)
こちらが一般の運動における、
主動筋と拮抗筋のはたらきです。
対してこちらはパーキンソン病における、
主動筋と拮抗筋のはたらきです。
一般の運動とパーキンソン病の運動における違いは、
「拮抗筋による抑制の強度の違い」
だと言えます。
もう少し詳しく書くと、
パーキンソン病による「運動の抑制」は、
「大脳からの運動の指示」を抑制するのではなく、
「関節の運動そのもの」を抑制しているのです。
これは、
「固縮(筋強剛)」
というパーキンソン病の4大症状の一つが、
端的にあらわしています。
なぜなら「大脳からの運動の指示」そのものを抑制しているのであれば、
筋肉は「収縮」ではなく「弛緩」するはずだからです。
けれどもパーキンソン病の症状は、
筋肉が収縮して動きづらくなるもの。
ということは、「大脳からの運動の指示」は出ているけれども、
その「指示」の内容に「違い」があると考えられます。
そしてその「指示」の「違い」とは、
「拮抗筋への収縮指示の大きさ」
だと言えます。
一般的な運動においても、
上の図のように拮抗筋は収縮します。
けれどもそれは、
急な動きが身体に対して与える負担を軽くするためのもの。
実際の運動を止めてしまうほどのものではありません。
しかしパーキンソン病の場合は、
拮抗筋への収縮の指示が必要以上に大きくなります。
それが、自分の意図した運動を止めてしまうほどにまで。
さらにこの「拮抗筋への収縮指示」は、
自分が意図した場合以外にも出される場合があります。
それは、筋肉の機能として存在する(とされている)、
「予備緊張」に伴うものです。
この「予備緊張」は、
普段から意図しない状態でも行われている筋肉の緊張です。
そして筋肉の緊張とは、
自覚の有無にかかわらず脳や神経からの指示を必要とします。
つまり無自覚の状態で出している筋肉への指示に付随して、
拮抗筋への収縮指示も出てしまう。
これがパーキンソン病のもう一つの4大症状である、
「安静時振戦」
の正体だと私は考えています。
つまり、
「固縮」と「安静時振戦」
とは別の症状ではなく、
「拮抗筋への過剰な収縮指示」
という同じ症状の別の側面だと考えられるのです。
そしてこの症状を生み出しているのが「ドーパミン不足」であり、
一般的な治療はドーパミンを薬剤によって補う方法を取ります。
もちろんこれは即座に効果を発揮します。
足りないドーパミンが補われると、
拮抗筋への過剰な収縮指示は軽減されます。
けれども補われたドーパミンが無くなれば、
また同じ症状がでます。
それに長期間の投薬には、
「ウェアリングオフ」という薬が効かなくなる現象もあらわれます。
そこで、なのです。
前置きが長くなりましたが、
「パーキンソン病」のリハビリとして「脱力」が有効であるという、
私の仮説を聞いていただきたいのです。
長い長い前置きで私が言いたかったことは、
「パーキンソン病の主な症状は、
拮抗筋への過剰な収縮指示によって起きる。
そしてその収縮指示は、
主動筋への収縮指示に伴って出される。」
ということです。
ということは、
「主動筋への収縮指示が減れば、
拮抗筋への収縮指示も減る」
とは考えられませんか?
「主動筋への収縮指示」こそが、
パーキンソン病の症状があらわれる「トリガー」なのです。
そして「脱力」とは、
その「トリガー」を引かなくなるということ。
なぜなら「脱力」とは、
筋肉の収縮を減らしていくことだから。
そしてさらに「脱力」が進んでいけば、
「運動」のメカニズムが変化していきます。
一般的な運動においては、
「筋肉への収縮指示」が運動のスタートです。
けれども「脱力」においては、
「筋肉を緩める指示」が運動のスタートなのです。
この「運動メカニズムの転換」が進むほど、
パーキンソン病の症状は出にくくなる。
つまり、
「脱力はパーキンソン病のリハビリに最適である」
ということが、
ここで私が言いたかったことです。
もちろん勉強不足であることは自覚しておりますので、
皆様の感想、ご意見をお待ちしております。
P.S.
もっと多くの方に来て頂いて、
より幅広く学べる環境。
さまざまな取り組みをされている人たちが、
「脱力」というキーワードで交流できる場所。
武颯塾大阪支部と神戸修練会を、
そんな場所にしていきたいと思っています。
このブログを読んで興味をお持ちでしたら、
ぜひ、ご連絡ください。
修練参加でも、質問でも何でも結構です。
ピンとくるものがあれば、
遠慮なくメールをください。
楽しみにしております!!
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