ここの所、運動における「支点」の重要性について、
繰り返し書いてきました。
「支点」を意識して動くことで、
「レバレッジ」の効いた合理的な身体運動が行える、
というのがここまでの話です。
もちろんそれだけでも素晴らしい効果なのですが、
「支点」を意識することのメリットはそれだけではありません。
というよりはむしろこれから紹介するメリットの方が、
現代においては必要とされているかもしれません。
説明しましょう。
「支点」を意識して動くときに何が起きているかというと、
「レバレッジ」全体を意識できているのです。
「支点」という概念はそもそも、
「力点」と「作用点」が無ければ存在しません。
「力点」と「作用点」があって、
そこに「レバレッジ」を効かそうとして初めて、
「支点」という概念が生まれるのです。
それに対して「力点」と「作用点」は、
それだけでも存在することができます。
「レバレッジ」を効かそうとしなければ、
動かす対象とそこに触れている部分が普通は意識されます。
つまり「力点」や「作用点」を意識するだけでは、
「自分」が何かをするという認識を越えられません。
「支点」を意識することで、
「力点」と「作用点」も含めた「全体」を意識できるのです。
それは、「自分」も「相手」も同じ「レバレッジ」を構成するものとして、
「並列」に置くことができるということ。
「レバレッジ」全体の中の「自分」というものを、
客観的に捉えることができるということなのです。
おそらくこの感覚が主になれば、
「自分」というものの定義が変わることでしょう。
より一層、
「自分」と「相手」を「同じもの」として感じるようになるでしょうから。
そうなれば、
「『自分』なんて存在しない」=「『自分』しか存在しない」
という禅問答のような世界が開けるのかもしれません。
すこし話が飛びましたので戻します。
「支点」を意識して動くことはすなわち、
「全体」を意識することにつながります。
そして「全体」を意識して動いている時は、
「自分」を客観的に「対象化」できているのです。
この「自分を対象化する」という感覚は、
訓練すれば「思考」「感情」「気分」に対しても広げられます。
「思考」「感情」「気分」が、
イコール「自分」ではなくなるのです。
すると今まで振り回されてきたネガティブな気持ちからも、
距離を置くことができます。
それらを感じなくなるわけではないのですが、
そこにどっぷりと浸かってしまうことを避けられるのです。
このことが「支点」を意識して動くことの、
現代における最大のメリットだと思うのです。
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